ヘンリー・フォード 999（レプリカ）

大衆車「T型フォード」を世に送り出し、アメリカのみならず世界中の庶民に広く自動車を普及させたことで知られるヘンリー・フォードは、モータースポーツの力を己の夢の実現に活用した人物である。

若き日のフォードは、「富裕層の持ち物であった自動車を、一般の人にも買えるものにし、自動車を使うことによって人々の生活を豊かにしたい」という大きな夢を抱いていた。その実現手段として、モータースポーツでの勝利や、世界記録を樹立することで資本家の関心を引き、さらにフォード車の優秀性を証明しようと考えたのである。そのために製作されたのが「999号」であった。

ちなみに「999」の名称は、時速160キロを誇った当時最速の蒸気機関車「999」にあやかったものである。木製のフレームに、排気量18,943ccの巨大な直列 4気筒エンジンを搭載した「999号」の最高出力は80馬力だった。

「999号」がモータースポーツで勝利したことや、氷上速度世界記録（時速91.37マイル（時速約147キロ）を樹立したことでヘンリー・フォードは注目を浴び、フォード社の創業に大きく貢献することになった。もし「999号」がモータースポーツで活躍できなかったら、人々は「T型フォード」を手にすることはできなかったかもしれない。

当館展示車両は、米国FORD博物館からご貸与いただいた「999号」のレプリカで、1966年に開催された万国博覧会出展のために製作された。